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ブレンダー商船

2013/05/02|会長ブログ

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   今回はライバルのD社とのブレンダー搭載給油船の顧客争奪商戦についてご説明します。

   第1次・第2次のオイルショックによる船舶燃料油の高騰が契機になり、重油のコストダウン策としてブレンダーが開発されましたが、我が国では英国のD社が船舶の補機関(発電機関)用として急速に普及させていました。
従来の使用重油より20%程度コストダウンでき、ブレンダーの製造費用も少ないことから短期間で普及し競合メーカーも乱立しました。

   その後、船舶用B重油を節約するため当社がプロセスブレンダーシステムを開発した経緯は「ブレンダー開発物語」として当社ブログに掲載しております。 プロセスブレンダーシステムは船主が自社船に搭載する装置で通産省(現経済産業省)の許可は必要ないものです。

   当時、ブレンダーを搭載した給油船にてブレンダー油を製造販売することは同省の許可は下りていませんでしたが、関西地区の大手ディーラーが原油の元売り会社と協力して許可を取ったことにより急速に陸上タンク基地、特に船舶への給油のための給油船にブレンダーを搭載する機運が発生し、その1号機商談になったライバルは英国のD社の日本法人D社でそれまでにはいささかのつながりはありました。

   ある日、D社の依頼で補機関用ブレンダーにつき当社に地区代理販売の要請があり、オペレーターの船主に勤務している友人にお願いし受注しましたものの、その後問題が生じました。
   造船所のブレンダーに納期遅延があり、当時造船不況で倒産が相次いだ時期でもあり造船所と当社の与信状況を懸念してかD社は「出荷2週間前に現金による入金がなければ出荷しない」の一点張りで、造船所の工程に支障をきたし、船主指定をいただいた友人にもご迷惑をかけいわれのない妥協を迫られましたが、煮え湯を飲む思いで送金し相当納期遅延も生じ大失態でした。

   こういった過去のいきさつがあるD社とブレンダー搭載給油船で2社間競合関係になったのが今回のお話です。

   販売開始当初は給油船向け商談1号機にて熱心な関心があり順調であるかに見えたが、営業担当者から「D社に内定した」との電話連絡があり、当時は携帯電話もない時代で詳細な情報を知りたいため即日担当者と造船所資材へ赴いた。
早速、営業責任者の常務さんと面談し「説明不足で申し訳ありません。弊社のブレンダー関連の実績説明に不足がありました。ご説明の機会をどうかお願いしたい」旨伝えたが特に反対の意向ではなかったので安堵しました。

   ホテルにて営業担当者と、D社と比して当社の不利な状況と有利な事項を検討した。
≪当社の不利な状況≫
① 社歴・知名度・規模・実績等で明快に劣勢であること。
② D社はすでに欧州で給油船に実績があること。
③ 情報では『当社は田舎の小さい会社で競争対象ではない』とされていること。
≪当社の対応可能な状況≫
① 給油船には実績はないが、フェリー船・陸上用タンク基地に実績があり評価されていること。
② 気合いの入った熱心なトップセールスができること。
③ 敵は当社を侮っていること。
④ 欧米製の舶来崇拝の時代は終わっていること。また、運航後のメンテナンスでは当社の方が有利となること。
≪状況判断≫
① 敵は現地代理店に指示しながら商談の経緯によりほぼ受注と判断していること。
② D社の造船所への現地訪問は多分ないこと。
③ D社との過去のトラブル発生時に私の『今治に来たらただでは帰さんぜよ』と言ったことが効いているはず。
④ D社の代理店では技術説明は多分困難であろうと判断できること。
⑤ 長期戦の覚悟が必要であること。
⑥ 船主対策については面談したうえでの即時対応しかないこと。
⑦ 今後、本商談と同種の商談は100基以上あり有望市場であること。

   営業担当者は連日の営業活動で疲労もあり気が萎えている様子。さて、如何なる戦略で行くか、本商談の成否がほかの100基ほどの商談に影響すること必定で、さしずめ関ヶ原の家康か光成かの天下分け目の戦である位な状況で、正攻法でいけば負ける確率は100%と考えられた。ここは正攻法を避け、孫子の兵法「兵は詭道なり」作戦でいくのみ。

   初日は金毘羅様の方向に向かい本日一日気が萎えないよう勝利を祈願したのち、営業担当者には今回の商談に当たっては背水の陣で対処すること。また、本社には本件の商談を受注するまでは帰社しない旨を告げた。

   船主への対応策は、まずお考えを聴取すること、懇親を深めること、話題を模索すること、当社ブレンダーの実績過程の会話を通じ、当社ブレンダーの特質を丁寧にご説明する過程で、D社対当社の比較を「英国対日本」の技術比較にすり替えることなどとすることにしました。
   このことを念頭においた船主の専務さんとの面談が出来、かっての愛媛県地区船主とのフェリー基地のブレンダー商談においての「坂の上の雲」の愛媛のお国自慢話を拝聴しました。
   また、当時日露戦争の日本海海戦では日露双方とも英国製戦艦で戦ったが、今や戦艦建造では日本が英国をはるかにしのぎ、特に一般商船はメードインジャパンが主流になっており船舶の機器類も一流であることなどを強調しましたが、目的は無駄話の過程で懇親を深めつつ、船主の意向を探ることにありました。船主の意向は『D社を明確に指定したのではなく、造船所がそうであれば構わない』とのことでした。
「午後からは造船所へ訪問し、ご説明不足を補ってまいります」とお伝えし船主の許を辞しました。
造船所では設計への対応策としてはご意見を承りながら、D社対当社の関係を「英国対日本」の技術関係に誘導すること、当社の実績を説明し項目ごとに機器選択設計思想を説明すること、敵の仕様内容を知ること、これらの方針で折衝説明した結果まずまずの感触が得られた。

   資材ではどうやら営業次第とのことで当方の対策としては、当社の実績説明を通じた世間話で懇親を深めること、結論を急がないこと、特に、輸入品に対し日本製の方が故障ほかトラブル時の対応が国内であるため適切で迅速に対応できることなどをご説明することを主眼に置くこととした。

   面談では世間話から営業の苦労談等の会話で終始懇親を深めるべく当社のPRをしました。面談した感触としてはお困りであるとの印象はありましたが、前日と比較すれば多少緩和したかに見えました。

   2日目、3日目、4日目と営業方針は前述の方法で対応しましたが、5日目よりは『詭道作戦』を『正攻法』に切替え「積水千仞の滝に発する」が如く、真正面から設計仕様の優劣の比較、メンテナンス対策、保証事項、特に当社製品は自動制御についてはメンテナンス時カセット方式で取替えて対応ができる構造であること、取扱は電気洗濯機程度の取扱であり技術者の乗船は不要であるなど納得していただけるまで説明した結果結論が出る日が来ました。

   いつものように営業の常務さんにご挨拶に伺うと私の顔を凝視しながら「私の負けです。受注するまで帰らないつもりかね」でありました。
一瞬耳を疑いましたが「ありがとうございます」と答礼し「早速資材部長さんにお会いさせていただきます」と申し上げますと「ここに呼びます」でした。
この時の状況は今に至るまで鮮明に思い出すことで、あの時常務さんは『頭』ではなく『腹』での回答であったと今更ながらに感謝の気持を新たにしております。

この商談の成功は大きく、その後の給油船向けブレンダーは当社が約80%のシェアーを確保するまでになり、その後台湾・シンガポールにも普及し思い出に残る商談となりました。

次回のブログは「遠洋航海船の発電用ブレンダー販売商戦」の物語をご紹介します。

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山本太郎

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